板場便り vol.35〈 2016年9月2日 〉
暑い日が続くと思っていたら、夕焼けに赤とんぼが群れ飛ぶ季節。
日本で一番美しいと言われる秋が到来致しました。
当店でも秋の食材が続々と入荷する中、とても大きな鰻が入荷されてきました。
そこで、今回の板場便り vol.35は、9月の強肴、『鰻の八幡巻きができるまで』をご紹介いたします。
鰻は夏が旬だと思っていたのですが
秋~初冬にかけて肉厚な身になり脂もよくのってくるそうです。
まな板に置くまでに腕にぐるぐると巻き付いてくるほど、
活きの良い鰻。今回の鰻は愛知産です。
画像左が目打ち、右が京都型の裂き包丁。
地域により料理法が違うので裂き包丁とウナギを刺す目打ちの形も違います。
包丁にも「関東型」、「大阪型」、「名古屋型」などありますが、当店では京都型を使用します。
目打ちをしたうなぎの頭から尾まで一気に「腹開き」にします。
関西は腹開き、関東は背開きと、さばき方にも諸説大きな違いがあるそうです。深いですね。
次に、包丁で持ち上げるように力を加えながら中骨を取り除き
背側の滑りをとります。
今回のうなぎは、八幡巻にしますので
身を縦に2等分にわたします。
尾の両側に指が入るくらいの切り込みを入れ、
2本を1組にして切り目にもう一方の頭を通し、
両側に引っ張って相生結びにて結び合わせます。
牛蒡は湯がいて薄味に炊き上げておきます。
うなぎにタコ糸を通し、牛蒡に括り付け、
片手で牛蒡を持ちながら鰻の身をきつく巻いていきます。
串打ちし、 これを白焼きします。
遠火で片側が焼けたら串を打ち直し、丁寧に四面を焼いていきます。
白焼きが仕上がったら、3回タレをうち、照りよくつけ焼きにしていきます。
“串打ち3年、裂き8年、焼き一生”
うなぎを調理できる一人前の料理人になるまでには、それだけ大変だという意味ですが、
この工程を見ているだけで、改めて料理人の凄さを目の当たりにしました。
こうして心を込め仕上がった八幡巻はたたいた木の芽を散らし
京焼 乾山写菊型向付にて皆様の元に運ばれます。
今月の初秋会席をどうぞお楽しみくださいませ。